親子で居候 in NY with イスラエルファミリーその③~ユダヤ教とイスラエル~

娘と二人で、イスラエル人のお友達ファミリーの家に居候したときの記録、第三弾。

はじめに

ニューヨークでの忘れられない思い出の一つに、イスラエル人お友達ファミリーのおうちでの3週間に渡る娘と二人での居候生活があげられます。深い感謝の気持ちを込めて、そのときのことを記録しておきたいと思います。というわけで、今回は、居候記録 in NYの第三弾。イスラエル人ファミリー宅で触れたユダヤ教(Jewish)について。

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NYでみたユダヤ教

ニューヨークにきて、はじめて実際に「触れた」文化/宗教といえるのが、ユダヤ教でした。

日本では馴染みの薄い宗教という点では、ヒンドゥーや、イスラームもそうだとおもうのですが、これらの宗教は、世界史の授業で結構重点的に取り扱われるので、なんとなーく、知っていました。しかし、ユダヤ教については、さっぱりでした。イスラエルについても、現代史で、複雑な中東情勢のなかで登場するくらい。しかも、試験に頻出する分野でもなかったので、あまりちゃんと記憶に定着せず。苦笑。

ところが、ニューヨークにくると…

居候先のお友達ファミリーはイスラエル人でユダヤ教徒(Jewishといいます)でしたし、留学先のロースクールにも沢山のJewishがいたし、職場にも多くのJewishがいました。三人部屋であったオフィスのオフィスメイトの私以外の二人もJewishでした。

住んでいたのが、Upper East SideのWASP社会を嫌ってユダヤ人の富裕層が住みだしたことで発展しだしたという、Upper West Sideだったので、近所にもたくさんのJewishが住んでいました。アメリカ人のJewishだけではなく、イスラエル人も多く住んでいました。

町中を歩いていても、Jewish向の食料品コーシャ(Kosher)のお店をよく見かけます。ニューヨークのミッドタウンにある、ダイヤモンドストリートと呼ばれる、ダイヤの卸問屋通りを歩いていると、かなりオーソドックスな格好をしたJewishが歩いていたり。

ほかにも様々な場面でユダヤ教の文化には遭遇しました。たとえば、クリスマスシーズン。最近のNYでは、Merry Christmasとはいいません。Happy Holidays!!!というのです。これは、同時期には、キリスト教のクリスマスだけではなく、ユダヤ教の新年のお祝いであるハヌカーもあるし、アフリカンアメリカンの新年のお祝いクワンザもあるからです。Merry Christmasはあくまでキリスト教のあいさつ。色々な宗教に配慮して、Happy Holidays!というのが、礼儀になっているのです。

(アメリカ人のJewishの同僚と話してて、少しびっくりしたのが、クリスマスプレゼントがサンタクロースから届いたことは当然ないよ、と教えてくれたこと。クリスマスツリーだって飾らない、と。まあ、考えてみりゃそりゃ当然そうなのですが。それでも仏壇とクリスマスツリーが共存しうる日本人家庭で育った私としては、やっぱりすこしびっくりでした。)

ちなみに、ユダヤ教の新年のお祝い、ハヌカーでは、8日間、歌を歌いながら、毎晩一本ずつロウソクを点灯していく伝統行事が行われます。ちなみにこのロウソクたては、メノラーといいます。ユダヤ人の多いニューヨークでは、クリスマスツリーのグッズの横にハヌカーのグッズが売られてることが多く、例えばわたしのオフィスビルやアパートでは、クリスマスツリーの横にマノラーも飾られていました。

人によって、宗教に対する厳格さはそれぞれですが、どんなに忙しい人でも、金曜日は日没までに家に帰り、親子で居候 in ニューヨーク with イスラエルファミリーその①~一緒に暮らして初めてわかる生活習慣の違い~でも記載した晩餐Shabbat Dinnerをたべ、土曜日は安息日として一切の労働をしなかったり、食事すらしなかったり。(もちろん、特に戒律に縛られずに自由に過ごす人もいます。)

ユダヤ人の同僚は、普通のお肉を食べなかったり(特別に処理された肉しか食べない)、魚介を食べなかったり、チーズバーガーを食べなかったり。ところが、若い友人は、チーズバーガーでもなんでも食べるよん、みたいな子もいたり、土曜日でも、安息日なんて関係なく、目の下にクマを作りながらがっつり仕事していたり。

居候先の友人宅は、厳格なタイプではなく、食事もなんでもOKでしたが、ユダヤ教のイベントは日本人には興味深いだろうと思ってくれたのでしょう。Shabbat Dinnerに招いてくれて、食事の祈りや歌を聞かせてくれたり、ハヌカーでのマノラー点灯儀式に毎年呼んでくれたりして、私にとっては素敵な体験になりました。

“Survivor”という言葉

さて、イスラエル人友達ファミリー宅での居候中は、本当に色々な話をしました。同じマンションに住む親しいファミリーだったので、すでにいろんな話をしていたのですが、それでも3週間の密度の濃い時間の中ではより深く、多くの事柄について話をしました。中でも、前述のとおり、ユダヤ教やイスラエルという、わたしにとっては、「未知」の世界についての話は、驚きや発見の連続でした。

特に印象的だったのは、ユダヤ人の迫害されてきた歴史に関する意識。

例えば、ナチスによるユダヤ人迫害。これは、もちろん知ってはいたけれども、どこか自分とはかけ離れた世界の話でした。アンネの日記、Beautiful Life、戦場のピアニスト、、、ホロコーストに関する映画や小説には触れ、都度、涙したりしていましたが、いずれも遠い遠い世界の話でした。

しかし、あるとき、何かの話のきっかけで、友人が、「誰々のおじいさんとおばあさんは、”survivor”でね、夜中に毎晩寝言で二人とも叫び声をあげているのをよく聞いていたんだって」という話をしてくれました。「survivor」…直訳すると「生存者」。何からの生存?と一瞬わからなかったのですが、強制収容所からの生存者という意味、と気づいた時には、それまで「ずっと遠くにあった世界」が急に接近したような不思議な感覚に襲われました。Survivorという一般名詞が、彼らにとっては、強制収容所からの生存者という意味になっているということ、それだけ、彼らにとって、ナチスによる迫害というものが「身近なもの」なのだと気づいた瞬間でした。

また、別のとき、反ユダヤ主義について話をしていたときのことです。ニューヨークはユダヤ人にとって住みやすい数少ない地域であるということ、特にヨーロッパでは、やはり反ユダヤ主義が根強く残っているので、いまでも差別を感じながら生活することが多いということ、最近は反ユダヤ主義が盛り返してきていること、など、友人が話をしてくれていたのですが、そんなとき彼女が放った言葉が忘れられません。「わたしはいつでも、子供たちが収容所に入れられたとき、迫害をうけたときに、生き残れるかどうかを考えている」と。

彼女は続けました。ユダヤ人が、迫害を受けずに住める場所はイスラエルを除いてない。NYは本当に稀有な場所。イスラエルを守ることは、自分たちや子供たちを守ることになる。だから、当然兵役だって受けるのだ、と。(※イスラエルでは、男女ともに兵役義務があります。)

経済的にも成功し、家族にも恵まれ、誰からどう見ても、裕福で幸せな生活を送っている友人が、常に、自分の子供たちが殺されるかもしれないという意識を頭の片隅に抱えていると知ったとき、(語弊を恐れずいえば)それまで見知ってきたまるで物語のような紙上の歴史や問題が、初めて自分の中で、現実のものとして変化したのです。

自分の知らない世界を知るということ

それまでの私としては、前述のとおり、中東の近現代史をちょっと敬遠していたくらい知識は浅く、さらにいえば、どちらかというと、イスラエルと敵対する国や地域の方に同情的な気持ちになって歴史を学んでいました。しかし、友人と話をしていく中で、それまで形成されていた認識に大きな変化がもたらされました。

きっと、イスラエルと敵対する国や地域の人と親しくなれば、また違った視点を持つことができ、自分の認識に大きな変化が生まれるのでしょう。

ありきたりな結論で恥ずかしいのですが、世界には知らないことであふれています。

外に出なければ、自ら知ろうとしなければ、知らない世界は知らないままです。知らない世界をしらないままに放置をしても、実はあまり困らない。

ところが、知ったあとに、知らなかったときの自分を振り返ると、とても恥ずかしくなるんです。知らないのに知っているかのように自分の中で勝手に話を作り上げ、それを前提に、あたかも自分が絶対正しいかのような議論を振りかざしていることが多かったりするから。。。

つまり、知らない世界を知らないままに放置していると、自分自身は気づいていなくても、世界の常識からみると、常識外れなものとして捉えられているかもしれないのです。

知らない世界に一歩踏み出すことは、決して簡単なことばかりではないですが、知らない世界を知るチャンスを得ると、どんな苦労も吹き飛ぶくらい自分の世界が変わる、というこの素晴らしい経験をぜひ多くのひとにしてもらいたい、、、NYでの経験を経てわたしはそう強く思うようになりました。特に、海外志向が弱まっているといわれる昨今の日本に、このことを強く発信していきたい。

無知の知、この当たり前のようでいて非常に難しい、ソクラテスの時代から言われていることにあらためて気づかされた居候生活は、わたしにとって一生の宝物となりました。

本当に有難う、Pファミリー!!!!

3 Comments on “親子で居候 in NY with イスラエルファミリーその③~ユダヤ教とイスラエル~

  1. Pingback: 色々なクリスマス@Tokyo & New York & Hong Kong – 海外でもワーママ生活

  2. はじめまして(^.^) 偶然こちらのページにたどり着き、とても興味深く読ませていただきました。中学生の息子に初めてイスラエル人の友達が出来、失礼ないように色々調べたく…^_^; 最後の太字部分「世界には〜宝物となりました」にジーンと来ました。

  3. MARISさん、コメントありがとうございます。
    とてもうれしいです。ユダヤ人の文化って日本人にとっては本当になじみがないものですものね。少しでもお役にたてればうれしいです。

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