母乳育児とワーママ~搾乳室の設営が促す(かもしれない)職場復帰の意欲~

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先日第二子が生後二か月を無事に迎えました。退院直後に高熱で入院したこと以外は、いたって順調にすくすく育っており、感謝の気持ちでいっぱいです。さて、今日のテーマは母乳育児(Breastfeeding)。

「ワーママ」が脚光を浴びる中、従来一般的だった1年間の産休育休ではなく、早期復職をはかるワーキングマザーも増えてきているのではないでしょうか。かくいう私も、第一子のときは生後6か月で復職。第一子のときの仕事再開の悩みの種のうちのひとつは、母乳育児をどうするか、について、でした。おっぱいの出もよかったし、第一子ということであらゆる部分で気合が入っていた(肩に力が入りすぎていた?)こともあり、母乳育児をやめたくなかった新米ママ。そこで、復帰直後は必死に冷凍母乳を保育園に持っていっていました。

冷凍母乳は、職場で搾乳。しかし、当時日本で働いていましたが、女子更衣室みたいなものはなく、ましてや搾乳室なんてものもなかったので、胸が張ってくると、女子トイレに行き、搾乳し、共有の冷凍庫に保管していました。搾乳機は会社に置いて置き、給湯室で搾乳に利用した哺乳瓶やキットを洗い、同僚のmyコップたちと一緒に並べておいて乾かしていました。

トイレで搾乳しているのをみてびっくりする方も多くいましたが、周りの人々の反応は温かったので、とくに困りませんでした。それでもトイレの隅で立って搾乳するのは、やはり周りの目が気になりましたし、衛生面も気になりました。搾乳につかった哺乳瓶を同僚の人のコップに並べて乾かすのも非常に気がひけました。

わたしのように「空気を読まない」社員だからやっていただけで、私以外に職場のトイレで搾乳している人に日本で出会ったことはありません。正直に言うと、「復職をしたいのならば、母乳育児はあきらめて、うまくミルクに切り替えるべし」というのが当時の私が日本で感じた無言の「空気」。結果的にだんだん職場での搾乳の数は減っていき、授乳は夜間のみというかたちになっていきました。

母乳育児支援が強い香港

というわけで、第二子を授かってから産後の仕事のことなどを考えるときは、「今回は、こだわりを捨てて、早いタイミングからさっさとミルクにきりかえよー」と思っていました。

ところが、香港に来ると、びっくりするほど、全力で、母乳育児を推奨されました。致し方ない場合はもちろん人工乳(Formula)を利用してください、という姿勢は日本と一緒なのですが、母乳へのこだわりは並々ならぬものを感じました。

産前から、母乳育児の重要性の資料が大量に渡され、待合室では、母乳育児は家族を巻き込んでとりくみましょうといった趣旨のビデオが延々と流れていました。(いずれも香港政府プロデュース) 20151227_043114379_iOS20151227_043619594_iOS20151227_043629968_iOS

産後も、母乳育児の指導はきめ細やかになされ、母乳育児用のホットラインまで。

わたしは最初の数日間母乳の出が良くなかったのですが、そうすると、母乳指導専門の看護師さんが出てきて、授乳の方法を手取り足取り教えてくれて、ひいては、後日電話がかかってきて、母乳育児がうまくいっているかのフォローアップまでなされました。

しかも、気合で乗り切れ!みたいなものではなく、搾乳機をうまく利用し母乳をストックし、夫もうまく利用しながら(笑)やっていきましょう、という感じで、非常に好感が持てるスタンスでした。

香港政府が公式ガイドブックとして母乳育児の重要性を積極的に流布している姿勢も、日本の政府のスタンスとどこか違う様相を呈していて、香港でこどもを出産してあらためて母乳育児について考えさせられるに至っています。

日本よりも母乳育児が注目を集めるアメリカ

超合理主義の国アメリカでも、復職するのならばミルク(Formula)に切り替える、というのが当然だろうと思っていました。というか、そもそも「母乳育児」が日本ほど重視されていないのではないかと思っていました。

実際さっさとミルクに切り替えるお母さんもいました。ところが、香港だけでなく、アメリカでも、母乳育児の重要性が改めて認識されつつあるようで、母乳育児に対する意識は思ったより強かったです。

米国の政府機関は毎年母乳育児に関する実態調査のレポート(Websiteはこちら)を出しており、積極的に母乳育児を推奨しています。かたや日本では、インターネットでぱっと探した限りでは、2007年に「授乳・離乳の支援ガイド」を出して以来、厚生労働省は、纏まった報告書やデータを公表しているわけではなさそうです。

(たくさん調査をしてレポートを提示すればいいっていうもんじゃないですが、それでも、こういった公表データや指針の数は、母乳育児に関する国としての関心の高さを感じるひとつの指標である気がします。)

搾乳機が身近なアメリカ&香港

母乳育児への関心の高さは、「搾乳機」への「距離感」からも感じ取りました。香港でも、アメリカでも、搾乳機が身近な存在。少なくとも、6年前の日本に比べると圧倒的に搾乳機が身近です。

6年前、私は前述のとおり、medelaの搾乳機を二台も購入し、職場と家でそれぞれ積極的に利用していましたが、周囲で搾乳機を利用している人はあまりいませんでした。今はわからないですが。。。

アメリカでは保険の内容によりますが、保険でmedelaの搾乳機をタダで購入できます。ベビー用品ショップでも、搾乳機の棚がかなり広いコーナーを占めていました。

母乳育児をただ推奨するだけでなく、そのために母親が大変な苦労をしないように合理的な体制を整えようとする様子が搾乳機への距離感?からも感じ取れました。

なんと母乳育児法が整備されているニューヨーク

さらに驚くべきことに、NY州では、いわゆるBreastfeeding Lawが整備されています。それに加えて、母乳育児をしたい母親のために、職場は支援体制を整えるべし!というガイドラインまで!!!!!(ガイドライン原文はこちら→Guidelines Regarding the Rights of Nursing Mothers to Express Breast Milk in the Work Place

その内容は、というと、、、

法律にはこう書かれています。

「Right of Nursing Mothers to Express Breast Milk. (育児中の母親が搾乳をするための権利)

An employer shall provide reasonable unpaid break time or permit an employee to use paid break time or meal time each day to allow an employee to express breast milk for her nursing child for up to three years following child birth. The employer shall make reasonable efforts to provide a room or other location, in close proximity to the work area, where an employee can express milk in privacy. No employer shall discriminate in any way against an employee who chooses to express breast milk in the workplace.

(雇用主は、従業員に対して、その従業員の子供が満3歳になるまで搾乳をできるようにするために、合理的な無給の休憩時間を与えるか、もしくは、従業員が有給の休憩時間または食事時間を搾乳のために利用することを認めなければならない。雇用主は、職場に近接するところに、従業員がプライバシーを保ちながら搾乳できるための部屋もしくは場所を設置する合理的努力をしなければならない。雇用主は職場で搾乳をすることを選択する従業員をいかなる方法でも差別してはならない。)」

わたしにとって、この法律は衝撃でした。すごいな、ニューヨーク、と素直に思いました。

この法律について知ったきっかけは、NYの子育て中の友人が、勤め先の法律事務所には搾乳室があるよ、と教えてくれたことがきっかけです。聞いてみると、搾乳室が実際に設置されている会社は多いようです。米国企業である夫の会社にも、「僕は知らないけど、あるらしいよー」と。

搾乳室の設置がワーママの職場復帰を促すかも?

前述したとおり、産後の復職を考えるとき、ひとつの悩みの種が母乳育児である私にとって、職場復帰をしても、母乳育児を続けられる体制が整っているというのは、復職のための大きな動機づけになります。

母乳育児にこだわりすぎる必要はないと思いますが、搾乳室があったり、搾乳機が手に入りやすかったりするだけで、母乳育児を続けたいと願うワーキングマザーの選択肢がぐっと広がるし、職場復帰へのハードルを下げるのではないでしょうか。

単に母乳育児がいいですよー、と宣伝するだけではなく、社会全体で母乳育児へのハードルが下がるようにサポートすること、これが今の日本には求められている気がします。

喫煙室を設けるスペースがあるなら、搾乳室を設ける会社が日本でも増えてくれるといいなあ。。

2 Comments on “母乳育児とワーママ~搾乳室の設営が促す(かもしれない)職場復帰の意欲~

  1. いま8ヶ月の子の育休を切り上げ、新しい会社で乳を搾りながら働いております。
    前の会社には個別ブースの仮眠室があったのでそこで、今の会社では空いている会議室(鍵がかかる)で搾乳していますね〜。
    トイレで搾乳は1回やったのですが、やっぱり衛生面と、気分的にやりたくなくて。
    電子レンジで消毒できるパックを使っています。水を入れて3分で消毒できるので便利です。ピジョンのやつで今は売ってないみたいなんですけど、、、オークションやフリマアプリで手に入るかも。
    電子レンジ、冷蔵庫、水道とシンク、個別ブースがある授乳室?搾乳室?が会社にあったらいいでしょうね〜。
    今のところは鍵のかかる会議室、湯沸室、お弁当温め用の電子レンジ、冷蔵庫(それぞれ点在しているのであちこち移動)で乗り切ってます、という話でした。

  2. おやぱんださん、コメントありがとうございます!
    やはり、トイレでの搾乳は気が滅入りますよね。たしかに、既存の設備をフル活用すれば、搾乳のための環境を整えられそうですね。でもおっしゃるとおり、オフィス内をひたすら移動しなきゃならないというのは、落ち着かないし、時間をとられますね。ただでさえ、残業できない分、時間をできるだけ有効に使いたいママにとってはつらいですね。
    電子レンジで消毒できる搾乳パックなんてあるんですね。探してみます♪情報ありがとうございます。

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